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群馬県太田市の試み:国語を除く、全教科をオール英語の授業にする

(平成14年12月1日更新)

産経新聞の11月21日の記事を読み、冷や汗が出た。 全教科をすべて英語で教える学校を作るという話である。

2002.011.21 ■教育特区実現に規制緩和

引用
「全教科を『オール英語』の授業にしたい」と名乗りを上げた群馬県太田市などの提案にも(1)国語の授業をどうするか(2)学習指導要領を守り検定教科書を使うのか(3)教員をどう確保するか(4)教育水準の著しい低下を招かないか−といった課題があったが、協議の結果、新たに「特区研究開発学校」を創設。太田市の「国語の授業は日本語で行い、その他の教科も検定教科書を英訳し、教育水準を維持する諸施策を講じる」とする意向などを踏まえ、長期的な実験校としてほぼ容認する方向だ。

さて、この手の話は頻繁に出てくる。こういうことを言う人は、たいがい次のような論理展開をなさる。

(1) 日本人は英語がしゃべれないよね。中学高校と6年間も勉強してるのに。プンプンプンプン。
(2) 同じアジア圏で、母国語が英語ではない国でも、日本人より英語ペラペラな人が多いなあ。
(3) そういう国は高等教育を母国語ではなく英語でやっているんだって。
(4) だから、彼らはいやでも英語を使わなければならないので英語が上達する。
(5) みんな英語ペラペラ
(6) うらやましいなあ、いいな、いいな。
(7) 日本でも授業を英語でやったらいいじゃん。

それでいいのか?

明治時代の高等教育は、外国人教師が外国語で教えていたという。 当時の日本にはまだ、日本にとって必要な学問(西洋の技術、軍事、科学等)を指導できる教師がいなかったからだ。外国人に教わり、そして外国語の本を読まなければならなかった。

今の日本は、外国人にたよらなくても日本人だけでも、ある程度の高等教育をできる。テキスト類も日本語の翻訳版がで豊富に出ている。英語が読めなくてもなんとかなる。

何も明治時代と同じ環境を、わざわざ人工的に作らなくてもいいのに。

それより心配なことがある。大学生になってからならともかく、中学高校時代に英語だけの授業をやって脳の発達は大丈夫なのだろうか。 ものを考えるときに、言語がその道具となる。一つの道具(母国語の日本語)が良いところまで出来上がりつつあるのに、別の未発達な道具(外国語である英語)にとりかえて、考える行為がうまく機能するのだろうか。

日本語での話し方や読み書き能力はあやふや、かといって英語も中途半端、そして他の教科も指導失敗ということになりはしないか。大学進学のときに、日本の大学は受からず、かといって英米の大学に入れるほどの英語力もないという状態にならないだろうか。

それになぜ英語にこだわるのだろうか。

群馬県太田市は、ブラジル人が多いそうだ。それならばポルトガル語で授業をする学校を作ればいいのではないか。そうしたら、その市で育った子供たちは、ジーコやロナウドともペラペラとしゃべれる。将来ブラジルにサッカー留学するときに便利。英語や英語圏の文化だけでなく、他の言語や文化も学ぶ。それが国際化ってもんだろう。

とはいえ、私ごときは、ただの英語下手で古くさい考えの、閉鎖的日本人である。 群馬県太田市は、私ごときが思いつくような批判はとっくに予想しており、きちんとした教育理念を持っているのかもしれない。 児童心理、発達心理、脳機能、言語学について厖大な時間と手間をかけて調査し、専門家の意見も聞き、現場の教育者とも話し合いをして出した結論かもしれない。

というわけで、むやみに批判してはならないと思う。この件についてはじっくりと腰をすえて見守ってゆきたいと思う。 とりあえず、群馬県太田市のメルマガのバックナンバー(6/5, 6/19)を読んだ。市長様がどのような素晴らしい内容が書かれているのか期待して。

あー?ろくに勉強してない癖に学校や教師の悪口を叩くドキュソそっくりなことをおっしゃってるではないか。 要約すると、「ボクちんが6年間も学校で英語を勉強したのに、ちっともしゃべれないのは文部科学省と学校が悪いんだ」って…

私の体験からいうと、英語をしゃべれないのは、学校や文部科学省や、教科書のせいではない。ようするにやる気がないからだ。 同じ教師、同じ教科書、同じ授業を受けたのに、英語ペラペラになって留学なり海外就職なりした人が同級生にいっぱいいる。(しかし、なんかムカつく)

さて、ここまでで、「子供の言語発達過程を考慮すると、外国語での教育は問題が有るのではないか」というような話をしたつもりだ。良い人ぶって「子供たちの将来が心配」と。

それはあくまで、たてまえである。 本音は「なんかさー、この先、英語ペラペラのガキどもが増えたらウザい。ムカつく。失敗しろ失敗しろ。こんな奴ら、大学落ちてしまえ」である。

参考資料

よみうり教育メール
群馬県太田市が英語教育の小中高一貫校の設置構想打ち出す(群馬)(6/13)

群馬県太田市発行のメールマガジンにおいて、「清水市長メッセージ」の項で、市長の主張が読める。英語関係の話は次のとおり。
http://mayer.city.ota.gunma.jp/backnumber/20020619.htm
http://mayer.city.ota.gunma.jp/backnumber/20020605.htm

asahi.comより。
「教育特区 「脱画一化」各地でうねり 競争加速:1 」

こんな記事もみつけた。県レベルでも英語使用についての意識が高いようだ。
「群馬県 英語版のメールマガジン発行、都道府県で初」


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